今週は、令和5(2023)年の立冬の候を目前にした文化の日ウィークの三連休・最終日に今年3回目の東京国立博物館へ行って来た。今回は開館時間に合わせて行ってみたのだけれど、まだ時間前なのに既に長い行列ができていて、そのほとんどが Foreign Visitors だった。あと、館内で無料Wi-Fiが利用できることを今更ながら知って初めて使ってみたり 。今回も本館で開催されている総合文化展のいくつかを(午後は別の用事があったので)午前中一杯、鑑賞してきた:
- #7376:本館2階5室・6室の「武士の装い」:2023年10月24日(火)~ 2024年2月4日(日)
- #7273:本館1階13室の「刀剣」:2023年9月26日(火)~ 2023年12月3日(日)
後者では國寳に指定されている「名物・大包平《メイブツ・オオカネヒラ》」を人生で初めて鑑賞することができた 。
まずは甲冑。こちらは白糸威胴丸具足《シロイト・オドシ・ドウマル・グソク》。江戸時代(17世紀)。徳川家康に仕えた美濃国・岩村藩主・大給《オギュウ》松平家に伝わる当世具足:
白糸威胴丸具足
全体を白糸縅とし、胸板や草摺や裾板には紅糸で日の丸を大きく表した意匠。家紋である「丸に蔦」紋を蒔絵で各所に飾っている。
こちらは徳川二十将図。江戸時代(18世紀)。家康とその家臣団を描いた肖像画。床几に坐る家康を頂点に徳川四天王をはじめ、後世でも名の知れた武将が描かれていた:
徳川二十将図
頂点は家康
こちらは溜塗打刀《タメヌリ・ノ・ウチガタナ》。室町時代(16世紀)。刀身の根本にあたる鎺《ハバキ》に桔梗紋の透かしがあることから明智惟任日向守光秀《アケチ・コレトウ・ヒュウガノカミ・ミツヒデ》、または明智左馬助光春の差料《サシリョウ》と伝えられ、明智拵《アケチ・ゴシラエ》の名を持つ:
溜塗打刀
無駄のない肉取りの鞘や、先の張った柄頭《ツカガシラ》など簡素ながら実用本位に作られている。
この大笹穂槍《オオササホヤリ》は幕末の刀工・固山宗次が、徳川四天王の一人・本多平八郎忠勝の愛槍「蜻蛉切」を写したもの:
大笹穂槍(蜻蛉切・写)
南蛮胴具足。安土・桃山時代〜江戸時代(16〜17世紀)。舶来の南蛮胴にならって作られたもので、兜は堅牢な鉄の打出し鉢で、前面には兎の耳と抉り半月《クリ・ハンゲツ》の立物があしらわれている。前胴正面に鎬《シノギ》をたてて「天」の字と「髑髏」を、背面に富士山を打ち出している:
兜
前胴正面
技巧的にも優れた具足で、明智左馬助光春の所用と伝わる。
伝・源頼朝坐像。鎌倉時代(13〜14世紀)。重要文化財。笏《シャク》を持ち、高い烏帽子をいただく威厳ある姿は、鎌倉幕府を開いた初代将軍・源頼朝像と伝わる:
伝・源頼朝坐像(重要文化財)
武家の略装である狩衣《カリギヌ》をまとい、指貫《サシヌキ》という袴をはくが、強装束《コワショウゾク》を着て両脚を倒した坐り方は、当時流行していた貴族の肖像画を手本にしたものとされる。
こちらは茶器の類。今年の2月にも鑑賞した蒲生飛騨守氏郷作の竹茶筅《タケチャシャク》と、大井戸茶碗・銘・有楽井戸。織田信長の弟・有楽斎が所持していたもの:
竹茶杓
大井戸茶碗・銘・有楽井戸(重要美術品)
こちらが國寳の太刀・古備前包平《コビゼン・カネヒラ》。名物・大包平とも。平安時代(12世紀):
太刀・古備前包平・名物・大包平(國寳)
平安時代末期に備前国の刀工・包平の健全無比の大作(古備前)。包平は、助平・高平とともに「備前三平《ビゼン・サンヒラ》」と呼ばれる名工の一人:
茎に刻まれた銘は「備前国包平作」
大振りで身幅の広い豪壮成すを形にしたもので、平安時代後期における一形体を代表するもの。地鉄と刃文の美しさに優れ、日本刀の横綱と称される名刀。姫路藩主で岡山池田家の池田三左衛門輝政の愛刀と伝わる。
こちらは刀・越前康継《エチゼン・ヤスツグ》。江戸時代(17世紀)。重要美術品:
刀・越前康継(重要美術品)
茎に葵紋が切られている
江戸幕府御用鍛冶を務めた康継は、家康から技量を認められて「康」の一文字を賜った上に、茎《ナカゴ》に「葵」紋を切ることを許された。
ここからは時代を彩る美術品を幾つか。まずは奈良時代の仏像・毘沙門天立像(重要文化財):
毘沙門天立像(重要文化財)
邪鬼を踏みつける
水晶で瞳をあらわし、均整のとれた姿と華やかな彩色が洗練された美意識を伝える。
剣と投げ縄を手に執り、怒りの表情で仏教の外敵や人々の煩悩を打ち砕く、不動明王像(鎌倉時代):
不動明王立像
巻髪で左目をすがめ、口の両端で上下に牙を出すのは平安時代以降に広まったスタイル。
これは江戸の火消しが着ていた半纏《ハンテン》。火消半纏・紺木綿刺子地人物模様《ヒケシ・バンテン・コン・モメン・サシコジ・ジンブツ・モヨウ》。江戸時代(19世紀):
火消半纏・紺木綿刺子地人物模様
江戸の町方では鳶職の人々が組体制で火消しの役割を担っていた。生地の表は籠目模様を型染にし、衿に火消しの組名の文字を染めている。鎮火したあかつきには、裏地の派手な模様を見せて誇らしげに市中を歩いたと云う。いかにも江戸っ子気風 。
源氏物語絵巻。江戸時代(17世紀):
源氏物語絵巻
源氏物語絵巻
最後は江戸時代(18世紀)に大流行した浮世絵で、喜多川歌麿が描いた美人画「名所腰掛八景・波の花」:
名所腰掛八景・波の花
浮世絵黄金期と呼ばれる寛政期(1789〜1801年)を代表する浮世絵師の歌麿が、市中の美人から吉原の遊女までさまざまな美人の姿態を描いた。
他にもいろいろ観てきたが、こちらも今更ながらだけど、写真を撮るにしてはガラスの映り込みや照明の反射が酷かった 。ショーケースの素材とか周囲にある照明の強弱とかでなんとかできないものだろうか。そういえば隣で同じように撮影していたフランス人も What a reflection!! って叫んでいたっけ 。
と云うことで、この時のフォト集はこちら:
2023年11月 東京国立博物館(1) (フォト集)
2023年11月 東京国立博物館(2) (フォト集)