もう半年近く前だけれども観てきた。
イラク戦争にNavy Seals Team3(中東地域担当)所属のスナイパーとして4度も従軍し、武装勢力からは「Shaitan Ar-Ramadi」(ラマディの悪魔)と恐れられた人物、C.S. Kyleの自伝をC.Eastwoodが監督し映像化した作品。前半は兵士としての勇敢さ、遠い中東で戦うことを志したアメリカへの愛国心の強さなどが強調され、それが後半には一転、弟や友人らが傷つき倒され、現地の幼い子どもたちを否応なしに戦争犠牲者に巻き込んでいくという現実が彼の愛国心を無情にも突き崩していく。
こんな重いストーリーを監督の素晴らしい演出とB.Cooperの演技でドーンと共に心の奥に響いてくる。まったく凄い映画だなぁと思った。C.Eastwood監督の映画をまともに観るのは今回が初めて。ちょっとそんな自分が恥ずかしい。そして蝕まれた彼は戦地から帰国し、戦闘の無い普通の生活に戻り、除隊した後も精神的に彼とその家族を苦しませていく。
1960年代のベトナム戦争以降の現代戦争、兵器や装備はもとりより戦術も近代化されているのだけれど、その中で一人の兵士を「人間」としてクローズアップした時に見えてくるものはあまり進化しておらず、むしろPTSD(心的外傷後ストレス障害)なる深刻な問題がどんどん浮き彫りになってきている。戦争はある一面では技術の革新をもたらすのだけれど、生身の人間はその見えないストレスに押しつぶされていくという構図を持つということが明確になってきた。それなのに戦争することをを厭わない国家や勢力が無くならないのは、やはり人間は愚かな本能を持つ生き物で、それは大昔に絶滅した「恐竜」と変わらないとでも言っているかのようだ。
この作品のKyleら家族の楽しそうなエンドロールが、逆に戦争に巻き込まれた人間に対する悲しさを語っているようで複雑な気持ちになった。
一応、小説も購入したのでゆっくり読む予定。
My Rating: ★★★★☆ (4.0点)